
SESにおいて、エンジニアのマネジメントで気を付けるポイント
システム開発を支える業態として注目されるSES(System Engineering Service)。その労働は準委任契約ですが、厳しい労働環境下に置かれてしまうエンジニアもおり、マネジメントが非常に大切です。早速、エンジニアのマネジメントで気を付けるポイントをご紹介します。
SESの労働環境の実態は?
システム開発・運用やソフトウェア開発などに必要な人材を求めるクライアントに対し、そのニーズに応じたシステムエンジニアを採用・確保し、客先常駐で業務を遂行させるのがSES。エンジニアの労働力を提供する準委任契約であるため、派遣先の指揮命令のもと業務を行う派遣契約や、成果物に対して報酬を受け取る請負契約とは異なります。
しかし、現場によっては基本的なルールが守られておらず、エンジニアの待遇や労働環境が悪化しているケースがあります。
例えば、SESの中には、発注元である顧客企業と業務を遂行するエンジニアとの間に何社も介在していて、2次請け、3次請けという多重下請け化している案件も。そうした場合、事前に言われていなかった曖昧な業務を押しつけられたり、受注金額が落ちてしまったりすることがあります。SES企業はエンジニアを提供して終わりにするのではなく、エンジニアのマネジメントにも取り組んだり、エンジニア自身にマネジメントの意識づくりをしたりしていく必要があります。
エンジニアのマネジメントとは?
では、エンジニアのマネジメントとはどのようなことを指すのでしょうか?
マネジメントには一般的に、「管理」「経営」といった意味があります。経営学者であるドラッカーが示した「組織の成果を上げるための道具、機能、機関」という定義で説明されることがよくあります。
SES企業は、目標達成に向けてエンジニアの管理をし、最終的に会社を成長させていく必要があります。SES企業の中には、淡々と契約や月次報告のオペレーションを回しているだけになってしまっているところもあるようです。これでは提供先の要求のコントロールもできませんし、労働基準法違反を見逃してしまうことも……。何より、エンジニアのモチベーションを向上させることができないのは問題です。
エンジニア自身には、自分が担当しているプロジェクトの成功に向けたタスクやスケジュールなどを管理するマネジメント能力が求められます。開発やインフラ、Webなどさまざまな分野に関する知識はもちろん、システムを適切に構築するためのテクニカルスキルも欠かせないでしょう。
スケジュールは短期と長期でそれぞれ設定できるとよいでしょう。長期的な目標から逆算して、短期のものをスケジューリングすることがポイントで、タスクの振り分け・進捗管理が行いやすくなります。
さらに、次の3つのスキルは、SES企業にとってもエンジニアにとっても、マネジメントの土台になるスキルです。
・コミュニケーション能力
相手の話を理解するとともに、認識に齟齬がないかを確認できる能力も含みます。
・問題解決力
プロジェクトを進める中で、問題に直面することは少なくないでしょう。そういった場合には原因を究明し、解決するための方法を探し出す必要があります。
・意思決定力
状況に合わせた意思決定を行い、パフォーマンスを上げられる能力も求められます。
提供先の選定にも注意
SES企業とエンジニアとでマネジメントに取り組むには、提供先の企業の選び方も非常に大切です。
〇大きすぎるプロジェクトは達成感を得にくい
大規模プロジェクトに携わることは、エンジニアにとって憧れかもしれません。しかし、大プロジェクトで数百人に取り組むような体制では、個々のエンジニアが携われるのは限られた部分のみ。開発の醍醐味などを感じやすいのは、中小規模のプロジェクトでしょう。
エンジニアのモチベーションを保ったり、スキルアップを促していったりするには、数十名でプロジェクトを進める規模が理想的です。
〇エンジニア間の交流に積極的
常駐して業務を進めていると、なかなか帰属意識が持てず、孤独感にさいなまれたり、仕事に対するモチベーションが低下してしまったりすることもあります。社内で交流会やイベントがあり、自社エンジニアとSESのエンジニアとが交流でき、仲間意識ができるような環境があると、マネジメント力も発揮しやすくなります。
〇明確な評価制度がある
SESのエンジニアの評価基準は曖昧になりがちです。評価制度が確立されている企業なら、キャリアパスが描きやすくなりますし、モチベーションも上がります。例えば、「常駐先とのコミュニケーションに対する評価」「勤怠など技術面以外の評価」が行われたり、定期的な面談や社内表彰などがあったりするとよいでしょう。
エンジニアのマネジメントは、提供先・SES企業・そしてエンジニアの三方よしにつながります。ぜひマネジメントの意識を高めていってください。